インフォメーション
ポリカーボネート製三方活栓のクラックに関する試験報告書
平成15年7月2日
日本医療器材工業会ポリカーボネート対応ワーキンググループ
1. 背景
平成14年10月、医療機関において全身麻酔剤プロポフォールを輸液ラインのポリカーボネート製三方活栓に輸液注入した際、三方活栓に破損(ひび割れ、以下クラックと呼ぶ)が生じプロポフォールが漏れる事象が発生した。当該プロポフォールは脂肪乳剤が添加剤として使用されていたことから、脂肪乳剤及び脂肪乳剤を含有する製剤等によりポリカーボネート製三方活栓等が破損する恐れがあるかないかを自主点検し、破損を生じる場合は添付文書の禁忌・禁止の項に当該製剤を使用しないことを記載する旨の通知が平成14年11月1日付けで厚生労働省医薬局安全対策課から発出された。
三方活栓等の製造業者及び輸入販売業者が加盟する日本医療器材工業会(医器工)では、対応のためのワーキンググループを設定し、クラック試験方法の確立と試験評価を行った。
2. ワーキング参加業者
テルモ(株)、(株)トップ、ニプロ(株)、日本ベクトン・ディッキンソン(株)、(株)ジェイ・エム・エス、日本シャーウッド(株)、(株)八光メディカルの7社。(敬称略)
3. 試験方法(プロトコール)の決定
平成8年に報告された文献(中尾正和他、プロポフォール使用時の三方活栓ひび割れ現象への薬物の影響、麻酔49巻(第7号)、802―805、1998年)を参考とし、医器工・ワーキンググループ参加企業にてプロトコールを作成し、以下の条件で試験を行うことを決定した。
3.1 締め付け方法
各社の三方活栓のメスコネクター部に脂肪乳剤を数滴滴下し、トルクゲージを使用して以下の3種類の締め付け強度にて、オスのロックコネクターを締め付け接合した。なお、初回接合以降、繰り返し締め付けをしない方法を「A法」とし(三方活栓からオスコネクターを外さない使用方法を想定)、また、初回接合後、観察時間ごとに三方活栓とオスコネクターの接続を一旦外し、クラック観察後に再度製剤を数滴滴下した後に所定の強度で締め直しを行う脱着を繰り返す方法を「B法」とした(三方活栓に接合するラインのみを交換し三方活栓は交換しない使用方法を想定)。
締め付け強度:数値が大きいほど、締め付け(捻る)強度が強くなる
(1)15cN・m
(2)30cN・m
(3)40cn・m
※cN・m:センチニュートン・メートル
3.2 観察時間及び判別基準
クラックの確認を行う時間は、1時間後、1日後、2日後、3日後、4日後及び7日後とし、観察時間ごとに目視にて、三方活栓のメスコネクター部にひび割れが明らかに確認され、圧力20kPaのエアーによる水没試験の結果、エアーリークしたものをクラックとした。
3.3 製剤
脂肪乳剤濃度20%のダイズ油及び生理食塩液については、全社で試験しプロトコールの評価を行った。プロトコールが確立できたことから、脂肪乳剤濃度が10%及び2.2%の製剤については各社で分担し試験を行った。
表1 試験対象の製剤名とダイズ油濃度
4. 結果及び考察
1)繰り返し締め付けを行わない限り、脂肪乳剤濃度、締め付け強度に関係なく、クラックは発生しなかった。
表2 繰り返し締め付けしない場合の結果(7社合計)
2)繰り返し締め付けを行う過酷な使用条件ではクラックが発生する可能性が高く、クラックの発生を助長する要因として締め付け回数(表3)、脂肪乳剤濃度(表4)及び締め付け強度(表5)が確認された。
表3 繰り返し締め付ける場合の結果(7社合計)
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
表4 脂肪乳剤(ダイズ油)濃度でのクラック発生数及び頻度(百分率)の比較(7社合計)
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
表5 締め付け強度でのクラック発生数及び頻度(百分率)の比較(7社合計)
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
3)生理食塩液では繰り返し締め付ける使用方法でもクラックは発生しなかった。
5. ワーキング参加の業者名と評価した三方活栓名称
日本医療器材工業会ポリカーボネート対応ワーキンググループ
1. 背景
平成14年10月、医療機関において全身麻酔剤プロポフォールを輸液ラインのポリカーボネート製三方活栓に輸液注入した際、三方活栓に破損(ひび割れ、以下クラックと呼ぶ)が生じプロポフォールが漏れる事象が発生した。当該プロポフォールは脂肪乳剤が添加剤として使用されていたことから、脂肪乳剤及び脂肪乳剤を含有する製剤等によりポリカーボネート製三方活栓等が破損する恐れがあるかないかを自主点検し、破損を生じる場合は添付文書の禁忌・禁止の項に当該製剤を使用しないことを記載する旨の通知が平成14年11月1日付けで厚生労働省医薬局安全対策課から発出された。
三方活栓等の製造業者及び輸入販売業者が加盟する日本医療器材工業会(医器工)では、対応のためのワーキンググループを設定し、クラック試験方法の確立と試験評価を行った。
2. ワーキング参加業者
テルモ(株)、(株)トップ、ニプロ(株)、日本ベクトン・ディッキンソン(株)、(株)ジェイ・エム・エス、日本シャーウッド(株)、(株)八光メディカルの7社。(敬称略)
3. 試験方法(プロトコール)の決定
平成8年に報告された文献(中尾正和他、プロポフォール使用時の三方活栓ひび割れ現象への薬物の影響、麻酔49巻(第7号)、802―805、1998年)を参考とし、医器工・ワーキンググループ参加企業にてプロトコールを作成し、以下の条件で試験を行うことを決定した。
3.1 締め付け方法
各社の三方活栓のメスコネクター部に脂肪乳剤を数滴滴下し、トルクゲージを使用して以下の3種類の締め付け強度にて、オスのロックコネクターを締め付け接合した。なお、初回接合以降、繰り返し締め付けをしない方法を「A法」とし(三方活栓からオスコネクターを外さない使用方法を想定)、また、初回接合後、観察時間ごとに三方活栓とオスコネクターの接続を一旦外し、クラック観察後に再度製剤を数滴滴下した後に所定の強度で締め直しを行う脱着を繰り返す方法を「B法」とした(三方活栓に接合するラインのみを交換し三方活栓は交換しない使用方法を想定)。
締め付け強度:数値が大きいほど、締め付け(捻る)強度が強くなる
(1)15cN・m
(2)30cN・m
(3)40cn・m
※cN・m:センチニュートン・メートル
3.2 観察時間及び判別基準
クラックの確認を行う時間は、1時間後、1日後、2日後、3日後、4日後及び7日後とし、観察時間ごとに目視にて、三方活栓のメスコネクター部にひび割れが明らかに確認され、圧力20kPaのエアーによる水没試験の結果、エアーリークしたものをクラックとした。
3.3 製剤
脂肪乳剤濃度20%のダイズ油及び生理食塩液については、全社で試験しプロトコールの評価を行った。プロトコールが確立できたことから、脂肪乳剤濃度が10%及び2.2%の製剤については各社で分担し試験を行った。
表1 試験対象の製剤名とダイズ油濃度
製剤名 | 脂肪乳剤(ダイズ油)濃度 |
生理食塩液 | 0% |
ダイズ油 | 20% |
プロポフォール | 10% |
アルプロスタジル | 10% |
フルルビプロフェンアキセチル | 10% |
高カロリー輸液用アミノ酸・糖・脂肪・電解質 | 2.2% |
4. 結果及び考察
1)繰り返し締め付けを行わない限り、脂肪乳剤濃度、締め付け強度に関係なく、クラックは発生しなかった。
表2 繰り返し締め付けしない場合の結果(7社合計)
観察時間 | |||||||
1時間 | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 7日 | ||
方 法 | A法 | 0/682 (0.0%) | 0/682 (0.0%) | 0/682 (0.0%) | 0/682 (0.0%) | 0/682 (0.0%) | 0/682 (0.0%) |
2)繰り返し締め付けを行う過酷な使用条件ではクラックが発生する可能性が高く、クラックの発生を助長する要因として締め付け回数(表3)、脂肪乳剤濃度(表4)及び締め付け強度(表5)が確認された。
表3 繰り返し締め付ける場合の結果(7社合計)
観察時間 | |||||||
1時間 (1回) | 1日 (2回) | 2日 (3回) | 3日 (4回) | 4日 (5回) | 7日 (6回) | ||
方 法 | B法 | 0/530 (0.0%) | 3/530 (0.6%) | 35/530 (6.6%) | 87/530 (16.4%) | 130/530 (24.5%) | 194/530 (36.6%) |
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
表4 脂肪乳剤(ダイズ油)濃度でのクラック発生数及び頻度(百分率)の比較(7社合計)
観察時間 | |||||||
1時間 (1回) | 1日 (2回) | 2日 (3回) | 3日 (4回) | 4日 (5回) | 7日 (6回) | ||
濃 度 | 2.2% | 0/50 (0.0%) | 0/50 (0.0%) | 0/50 (0.0%) | 2/50 (4.0%) | 5/50 (10.0%) | 5/50 (10.0%) |
10% | 0/270 (0.0%) | 3/270 (1.1%) | 14/270 (5.2%) | 35/270 (13.0%) | 59/270 (21.9%) | 94/270 (34.8%) | |
20% | 0/210 (0.0%) | 0/210 (0.0%) | 21/210 (10.0%) | 50/210 (23.8%) | 66/210 (31.4%) | 95/210 (45.2%) |
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
表5 締め付け強度でのクラック発生数及び頻度(百分率)の比較(7社合計)
観察時間 | |||||||
1時間 (1回) | 1日 (2回) | 2日 (3回) | 3日 (4回) | 4日 (5回) | 7日 (6回) | ||
締 め 付 け 強 度 | 15cN・m | 0/180 (0.0%) | 0/180 (0.0%) | 1/180 (0.6%) | 6/180 (3.3%) | 14/180 (7.8%) | 28/180 (15.6%) |
30cN・m | 0/180 (0.0%) | 1/180 (0.6%) | 16/180 (8.9%) | 42/180 (23.3%) | 60/180 (33.3%) | 79/180 (43.9%) | |
40cN・m | 0/170 (0.0%) | 2/170 (1.2%) | 18/170 (10.6%) | 39/170 (22.9%) | 56/170 (32.9%) | 87/170 (51.2%) |
注)観察時間の( )内の数字は繰り返しの締め付け回数
3)生理食塩液では繰り返し締め付ける使用方法でもクラックは発生しなかった。
5. ワーキング参加の業者名と評価した三方活栓名称
業者名 | 販売名 | 問い合わせ先 |
テルモ株式会社 | テルフュージョン三方活栓 | TEL:03-3374-7199 東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1 担当:高尾(薬事部) |
株式会社トップ | トップ 三方活栓 | TEL:03-3882-3101 FAX:03-3881-8163 東京都足立区千住中居町19-10 担当:山崎(薬事課) |
ニプロ株式会社 | ニプロ三方活栓 | TEL:06-6375-6738 FAX:06-6375-0171 大阪市北区本庄西3-9-3 担当:岸(薬事管理部) |
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 | コネクタ 三方活栓 | TEL:03-5413-8244 FAX:03-5413-8188 東京都港区赤坂8-5-26 赤坂DSビル 担当:清水(メディカルアフェアーズ) |
株式会社ジェイ・エム・エス | JMS三方活栓 | TEL:082-243-5806 FAX:082-243-5948 広島市中区加古町12-17 担当:浦冨(品質保証室) |
株式会社八光メディカル | 三方活栓 | TEL:026-275-0121 FAX:026-276-0492 長野県埴科郡戸倉町戸倉3055 担当:塩野入 |
日本シャーウッド株式会社 | セイフTポート | TEL:03-3355-9414 FAX:03-5366-6896 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-7 担当:八島(薬事課) |